第2話  君の為に

そんな成り行きで無事開店。と言っても本当に身内営業の為

新規のお客さんなんて月に一組二組の世界。たまに忙しい日が

あればお客さんにまでビックリされ、喜んでもらえる程でした。

ただそれでも、グループで使ってくれる人が多かったから、

そこそこ暮らせる程度には、営業できました。

今でも思い出深いのが、北海道から毎年冬場限定で飲みに来てくれる

土建屋さんの連中。初めてチラシを撒いて、早速来てくれた人達です。

“マスターも一緒に飲むべや”なーんて言ってくれて、普通に仲良くなりよく

お店に泊り込んで朝まで飲み明かした物です。北海道に帰った後も夕張メ

ロンやイクラに秋刀魚、お礼ですって色々送ってもらいました。仕事が内地

で無くなり今では会えなくなりましたが・・・。他にも自衛隊の人達なんかも

免許取りに来ている時に、3ヶ月の間に20回位来てくれました。特にその頃

僕は、“聞け わだつみの声”にはまっていたものだから、もう色々質問して

教えてもらいました。自衛隊のイメージと違い、白虎隊ってこんななのかな?と

感じる程、純粋で可愛らしい少年のような子達が多かったです。皆本当の

弟のようにかわいい子達でした(本当の弟はかわいくないけどねー)

ただどちらとも、遠くから一時的に宇都宮に来ているだけに、いつか訪れ

る別れの日が近づくにつれ、いくら水商売と言えど寂しい物がありました。

毎年毎年、雪の降り初めが再会の前兆になる北海道の人達、

帰った後も“千葉に行く途中マスターに会いに来ちゃいましたよ”と新潟から

ビックリさせに来てくれた自衛隊の田仲やトラックの長距離の最中に顔出しに

来る長沢。お客さんとは、いつか来なくなる日がくる物なのかも知れない。

だけど、今振り返れば、その時代時代のお客さん達全てが、お店の一本

一本の、震度6が来ても倒れる事の無いぶっとい柱になっている気がします。

そしてそんな別れがある度に心に思う事。それが!

お店を続けていれば、またいつか会えると言う気持ち。

そんな気持ちが苦難の日々さえ乗り越えさせる。

ただ、ただ一人を除いては・・・。

開店から4年目の春。一本の電話

“よーおめー米あるかよ?”  “いやーあまり無いっすけどお金もないんでー”

“お金後でいいから米届けるよー” “なんか、あったんすかー”

“オレ癌みたいでなー”     “はー????????????”

“入院するんだわー”      “・・・・・・・・・・・・・”

4月1日では無い、まだ3月中旬の出来事。冬に逆戻りなんて単純な言葉

では言い表わせない、逆上しそうな感情。僕が心配しないように明るく振舞う

表情が 僕の言葉を奪っていく。

そして僕は・・・・・・もう止められない。

続水曜日     第3話 もう止められない